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インタビュー Vo.2

TIFF学生応援団が、映画祭とそこで上映される映画の魅力を学生目線で伝えるために映画祭スタッフなどにインタビューする特別企画第2弾。今回は東京国際映画祭(以下TIFF)の顔とも言える、コンペティション部門。その、選定を手掛けている作品チームの
矢田部吉彦プログラミング・ディレクターに今年の部門の魅力についてなどをお伺いしました。


対談:下野篤史(TIFF学生応援団)×矢田部吉彦(コンペティション プログラミング・ディレクター)




取材

―今年のコンペティション部門の作品選出で心がけたことはありますか?

矢田部吉彦プログラミング・ディレクター(以下、矢田部PD):そうですね~、一番の分かりやすい基準としては、“新しい”作品ですかね。本当に秋の新作を集めました。他には、国のバランスですかね。なるべく世界の地域から満遍なく作品を選ぶようにしました。ジャンルもそうですよね。同じタイプのような作品ばかりではなく、バラエティー豊かなジャンルの作品を集めました。あとは、映画を観る人の中には監督で観る人もいるので、ベテランの監督から若手の監督まで幅広い監督の作品を選びました。でもこれは、表面的なこと。それ以上に、どういった作品を選んでいこうかといった内面的なことのほうが一番悩みました。

―今の若い世代の人は、昔と比べると映画をあまり観なくなってきていますが、そういう人でも楽しめるような作品を選んだりもされたんですか?

矢田部PD:それって本当に重要なことですよね。今年のコンペティション全15本の中には、映画好きの人向けの作品もあります。でも、そうではない人にも楽しんでもらえるような作品もちゃんとあります。それぞれが楽しめるような作品があるって言うのが、TIFFの特徴だと思います。

取材

―僕は今年のコンペティションの中で青年が自転車で過酷な旅をする『転山』が気になっているのですが矢田部さんは昨年自転車で大怪我をされたとか。作品を観てどうでしたか?

矢田部PD:詳しいね(笑)。確かに(自転車で)坂を下るシーンを観てて「やばい、やばい」ってなりました。そうですね・・・やっぱ思い出しますね。あっ!もちろん思い出すから選んだわけではありませんよ!(笑)でも自転車好きなんで、思い入れはあります。作品の内容を見ても、主人公の青年がボロボロになりながらも、目的に向かっていく姿がストレートに伝わってきて、とても誠実でいい映画だなと僕は思いました。


―今年のコンペティションでぜひ学生に観てもらいたい作品は?

矢田部PD:そうですね、時間があるし500円なので冒険してほしいです。一番興味がないような作品を観てみるとか。「これ絶対普段なら観ない」って作品を観てもらいたい。自分開拓みたいな(笑)。これって学生の特権じゃないかな。もちろん惹かれる作品も観てもらいたいですけどね。時間は無駄にさせない自信はあるので(笑)。

―映画祭では、作品の裏話が聞けることも魅力の一つだと思いますが。

矢田部PD:もちろんですよ。前知識もない状態で作品を見るのもいいと思います。でも、裏話だったり解説を聞くことで、2倍楽しめるんじゃないかなと。どの監督も、作品にまつわるエピソードがありますよね。エピソード以外にも、自分が疑問に思ったことも上映後のQ&Aで聞くことができます。それってとても貴重なことですよね。

取材

―そんなTIFFのQ&Aは他の世界の映画祭のと比べてみてどのような違いがありますか?

矢田部PD:大きく2つの特徴があります。1つ目は、日本のお客さんはすごく劇場に残ります。海外の映画祭では、「作品の上映後に監督さんが来ます」って言っていても、エンドロールになるとブワ~ってお客さんが帰るんですよ。最終的には10人ぐらいしかいなくなるから、残ってる自分とかは、もうヒヤヒヤしてます(笑)。でも、意外と監督も含めあんまり気にしてないんですよ(笑)。2つ目の特徴は、日本のお客さんは(Q&A中に)ほとんど手を挙げない(笑)。
たくさんいるのに挙がらないんですよ。逆に、海外はどんどん手が挙がります。日本のお客さんは、スロースターターでもある。2,3個質問が出ると、手が挙がり始める。でも、ちょうどその頃に、Q&Aが終わるんですね(笑)。本当に、「遅いよ!」って感じです(笑)。

―今年TIFFでは学生当日券500円という初の試みが話題を呼んでいますが、どんなことがきっかけになったんでしょうか?

矢田部PD:昨年の映画祭のアンケートがあったんですけど、その統計で学生の人たちにあまり来てもらえてないんじゃないのかなって思ったのがきっかけでした。普段、映画館に行って映画を観ててもお客さんは40-50代が多いですよね。自分は、学生がそういったとこにあまりいない状況を、本当にまずいと思ってます。もっと今の学生に映画を観てもらわないと、映画産業自体の未来はないのかなって思います。しかも、映画って若いうちに観た方がいいんですよ。好奇心が湧いてきますからね。最初は、学生は“タダ”でもいいかな~なんて(笑)。で、500円だったら気軽に見れるし、「イマイチだな~」ってなっても500円なら許してもらえるかな(笑)。逆に、500円で自分の好きな作品に出会えたらすばらしいと思う。まだまだ、これからなので今後この取り組みがどうなっていくのか期待しています。

取材

―矢田部さんはどんな学生でしたか?

矢田部PD:僕は、運動系、文化系の両方に興味を持っていました。部活は中・高・大とアルペンスキーをやっていたので、冬は山にこもって。春になると都会に戻って映画を観る生活をしてました。映画は中1ぐらいから、名画座で観てました。当時はレンタルショップもまだなかったので、皆そういうとこで観てました。そんな時代から、今ではレンタルショップは当たり前ですし、これからはVOD(ビデオ・オン・デマンド)の時代になるんですかね。

―映画業界を目指す若い世代に向けて一言。

矢田部PD:とにかく映画を観ること。最近の若い人は、映画を撮っている人ですら作品をあまり観ていない傾向にある。なかなか働きだすと、たくさん観れなくなってくるので、観れる時に観てほしい。映画好きなら、とにかく観てほしい。それだけです。




今回、矢田部さんとの対談を通して、映画を見る事、聞くこと、選ぶ事から始まる意外な映画の楽しみ方をたくさん教わりました。今年は、一味違うTIFF を楽しめそうです!


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